プリアンプ比較試聴その3
いよいよプリアンプ選びの最終段階。本当は心の中はViola Cadenzaに半ば決まっているのだが、ネットではCadenzaを差し置いてBAT VK-51SEの評価が高いように見受けられ、はて、私の以前の比較試聴では何か見落とし聴き落としがあったのだろうかという不安を払拭できないでいる。そこで、その不安を解消し、心置きなくCadenzaの自宅試聴に臨むために、ここに再度決戦の比較試聴をお願いしたのだ。ショップでは、嬉しいことに"FM Acoustics祭り"を開催中。SPはJM Lab Alto Utopia Beのセッティングをお願いした。
最初の機器構成は次のとおり。
AntelopeAudio OCX (176.4kHz)
↓
Esoteric P-03 (DSDコンバート)
↓
Esoteric D-03 (DSD DA変換)
↓
FM Acoustics FM266
↓
FM Acoustics FM115
↓
JM Lab Alto Utopia Be
この構成からプリをVK-51SE、Cadenzaと換えていく。チェックCDはいつもの「LaShell Griffin / Free」。
●FM Acoustics FM266
FM Acousticsは、今年2005年のインターナショナル・オーディオ・ショーでlumen white diamond lightとのセットでの実演を聴いた。甘ったるい音という印象だった。ディテールまで分析的に聴かなかったし、それがFM Acousticsの音なのかlumen whiteの音なのかも分からなかったが、とにかく甘ったるい音という強い印象を持った。思えば贅沢なセットであった。
ヌルッとしたあま~い音。この日の試聴も先入観が手伝ってか、第一印象は同じような音に聴こえた。そうかこの甘さはFM Acousticsの音だったのか、そう思った。何がどう甘いのかよく聴いてみる。
まず、それぞれの音の出だしがエッジのないヌルッとした出かた、そしてそのままヌルヌルッと長く尾を引く。楽器にローションを塗ったかのようだ。音にアタック感がなく、切れが悪く、そのせいかテンポがゆっくりと聴こえる。まるで別アレンジの曲を聴いているような気になる。体の力が抜け、けだるくなるような音。寝る前に聴くにはいいかもしれないが、朝一番には聴きたくない音。
しかし、しばらく聴いて慣れてくると、悪い印象は薄れ、なんとも艶やかに聴こえてきた。ヴァイオリンの弦の響きなどは、まるで光沢を放っているかのようにツヤツヤと美しく心地よい。コーラスの声も若々しく張りがありツルツルだ。だんだん聴き惚れてくる。
ヌルヌル、ツヤツヤ、ツルツルといった印象だが、何かごまかしているということではなく、解像度もあり、微弱音の表現もしっかりしていて、密度が高い。
場がにぎやかな感じがするのだが、Metronome PA1 Signatureと比較すると分かりやすいだろうか。PA1は、倍音成分の響きが多く、霧のように場全体を満たす。FMは主音に伴う倍音よりもむしろ残響音が長く尾を引く。霧のような感じではなく、いく筋もの水の流れがそこにあるよう。音と無音がはっきりとしてノイズフロアは低い。かえって分かりにくい比較かな?
ここで頭に入れておきたいのは、マスタークロックOCXの設定が176.4kHzであることと、P-03がPCMをDSDにコンバートし、D-03にてDSDをDA変換している点だ。つまり、音が高密度になり、ツルツル感が倍増されていると考えられる。その分は割り引いて聴かないといけない、けどそんなこと難しいか。
とにかくFMはハマると抜け出せなくなるような麻薬的な魅力、ということがよく分かった。自分はお金持ちじゃない、という意識をしっかり持っていれば大丈夫なハズだ!
エキシビションのFM Acousticsにちょっと力が入ってしまったが、いよいよ本戦に望もう。
その前にちょいと余談。最初、JM Lab Altoは久しぶりの音出しで、SPがまだ硬いとのことであった。確かにウーファーの動きが鈍いようで、低域の音がボワボワ。それを指摘すると、ちょっと待てとのことで、ベースを強調した曲を1曲、相当な大音量で再生し始めた。見ているとウーファーが2~3cmほども動いている。すごい。こんな大音量、うちのマンションでは到底出せない。
1曲終わった後試聴に戻ったが、驚くほど低域のスピードが速く軽やかに変わっていた。低域ばかりか高域も引っかかりが取れスムーズ。エイジングとか暖機運転とか大切なんだなぁ。新品のSPで早く音出しをしたいときは、指でエッジをマッサージすると効果があるなどと教えていただいた。へぇ~。
●BAT VK-51SE
いつものとおり、低域から高域までバランスよく陰影深くクッキリと鳴らしてくれて、安心して聴ける。しかし、FMの後だとずいぶん質素に聴こえてしまう。残響音は短く、Goldmundのようなハイスピードに感じてしまったが、あくまでもFMとの対比としてなのでGoldmundファンからは共感は得られないかもしれない。
以前より感じていたBATの色彩は確かに感じられる。中高域の音に、わずかに低域方向に膨らむ響き。風呂場で湯船をかき混ぜたときの水の音のような周波数帯の音。BATに惚れる人はこの色彩に惚れるのだろう。喩えるとしても湯船ではなく、小川のせせらぎとかになるのだろうなぁ。
まことに残念ながら、私にはこの色彩が好みに合わない。ただ、この価格帯のプリアンプとしては、非常に優秀だと思うし、私的にはGoldmund Mimesis 27MEに並ぶパフォーマンスの高さだと思う。嗜好のものをパフォーマンスと言ってしまうと語弊があるが。あ、ただし外見はダメね。安っぽい。
●Viola Cadenza
いよいよ本命。ただしこの本命君、私がBATを試聴している最中にメーカーの担当さんが搬入してきたピカピカの新品。世に出てから初めて鳴らす音を私が試聴するという、何とも心もとない状況。
音を出してみた。ちょっと硬くてカスレてて、潤いと温もりが足りないが、とりあえずCadenzaの音が出て安心。この色彩の方向性なら、私の好みに合致する。このままエイジングが進めば、きっと柔らかくて艶があって、潤いと温もりのあふれるCadenzaの音になるだろう。
残響音は、FMほどではないが、BATよりも長く尾を引く。この点もCadenzaの色彩を引き立たせるのに効果を上げている。
でもFMやBATと比べるとちょっと低域が出てないなぁ、と言うと、ACケーブルが違っているとのこと。
●Stealth Cloude Nine / Shunyata Anaconda
ということで、ACケーブルを交換して再度試聴。今まで刺さっていたStealth Cloude Nineから、FMとBATで使用していたShunyata Anacondaに換えた。
曲の出だしのヴァイオリンがなんとなくSPよりちょっと前にせり出した感じがする。続くボーカルの声を聴いてあれ?と思った。別人のように声が違う。低域成分が増し厚みが出て、声に温もりが乗った。それに、奥の方に小さく定位していたのが、それまでより3歩くらい前で唄っているように感じ、急に人の気配を漂わせはじめた。全体的に硬質な感じの音は新品のせいだと思っていたのが、一気に柔らかくなった。プリごと換えたのかと思ったがそうではない、Cadenzaのままだ。それほどの変化だと思った。この状態が先ほどのFM、BATと同一環境であるなら、Cadenzaはかなり好ましい音といえる。
Stealth Cloude Nineは以前も聴いたことがあるが、多分最初の硬質な音が本来の新品Cadenzaの音であろう。Stealthは素直に何の脚色もせずにその音を出したのだと思う。それにStealthの音場型の空間表現が硬質な感じを強調してしまったのかもしれない。
Shunyata Anacondaは新品Cadenzaの硬質な音に低域の厚みを加えたようだ。空間表現は多分リアリティを増す方向に影響したのだろう。Anacondaは、この新品の試聴には大変好ましい方向に変化させたが、エイジングが進んだCadenzaにはどうだろう。さらに良くなるのだろうか、ちょっと疑問ではある。
ケーブルの選定は、時間が経ってから行うべきなのであろう。あ、もうCadenza買うつもりになってるし。
ということで、私は当初の目論見どおり、Viola Cadenzaの自宅試聴を依頼することになった。ちょうど年末年始の休みがあるので、じっくり聴くことができそうだ。
最初の機器構成は次のとおり。
AntelopeAudio OCX (176.4kHz)
↓
Esoteric P-03 (DSDコンバート)
↓
Esoteric D-03 (DSD DA変換)
↓
FM Acoustics FM266
↓
FM Acoustics FM115
↓
JM Lab Alto Utopia Be
この構成からプリをVK-51SE、Cadenzaと換えていく。チェックCDはいつもの「LaShell Griffin / Free」。
●FM Acoustics FM266
FM Acousticsは、今年2005年のインターナショナル・オーディオ・ショーでlumen white diamond lightとのセットでの実演を聴いた。甘ったるい音という印象だった。ディテールまで分析的に聴かなかったし、それがFM Acousticsの音なのかlumen whiteの音なのかも分からなかったが、とにかく甘ったるい音という強い印象を持った。思えば贅沢なセットであった。
ヌルッとしたあま~い音。この日の試聴も先入観が手伝ってか、第一印象は同じような音に聴こえた。そうかこの甘さはFM Acousticsの音だったのか、そう思った。何がどう甘いのかよく聴いてみる。
まず、それぞれの音の出だしがエッジのないヌルッとした出かた、そしてそのままヌルヌルッと長く尾を引く。楽器にローションを塗ったかのようだ。音にアタック感がなく、切れが悪く、そのせいかテンポがゆっくりと聴こえる。まるで別アレンジの曲を聴いているような気になる。体の力が抜け、けだるくなるような音。寝る前に聴くにはいいかもしれないが、朝一番には聴きたくない音。
しかし、しばらく聴いて慣れてくると、悪い印象は薄れ、なんとも艶やかに聴こえてきた。ヴァイオリンの弦の響きなどは、まるで光沢を放っているかのようにツヤツヤと美しく心地よい。コーラスの声も若々しく張りがありツルツルだ。だんだん聴き惚れてくる。
ヌルヌル、ツヤツヤ、ツルツルといった印象だが、何かごまかしているということではなく、解像度もあり、微弱音の表現もしっかりしていて、密度が高い。
場がにぎやかな感じがするのだが、Metronome PA1 Signatureと比較すると分かりやすいだろうか。PA1は、倍音成分の響きが多く、霧のように場全体を満たす。FMは主音に伴う倍音よりもむしろ残響音が長く尾を引く。霧のような感じではなく、いく筋もの水の流れがそこにあるよう。音と無音がはっきりとしてノイズフロアは低い。かえって分かりにくい比較かな?
ここで頭に入れておきたいのは、マスタークロックOCXの設定が176.4kHzであることと、P-03がPCMをDSDにコンバートし、D-03にてDSDをDA変換している点だ。つまり、音が高密度になり、ツルツル感が倍増されていると考えられる。その分は割り引いて聴かないといけない、けどそんなこと難しいか。
とにかくFMはハマると抜け出せなくなるような麻薬的な魅力、ということがよく分かった。自分はお金持ちじゃない、という意識をしっかり持っていれば大丈夫なハズだ!
エキシビションのFM Acousticsにちょっと力が入ってしまったが、いよいよ本戦に望もう。
その前にちょいと余談。最初、JM Lab Altoは久しぶりの音出しで、SPがまだ硬いとのことであった。確かにウーファーの動きが鈍いようで、低域の音がボワボワ。それを指摘すると、ちょっと待てとのことで、ベースを強調した曲を1曲、相当な大音量で再生し始めた。見ているとウーファーが2~3cmほども動いている。すごい。こんな大音量、うちのマンションでは到底出せない。
1曲終わった後試聴に戻ったが、驚くほど低域のスピードが速く軽やかに変わっていた。低域ばかりか高域も引っかかりが取れスムーズ。エイジングとか暖機運転とか大切なんだなぁ。新品のSPで早く音出しをしたいときは、指でエッジをマッサージすると効果があるなどと教えていただいた。へぇ~。
●BAT VK-51SE
いつものとおり、低域から高域までバランスよく陰影深くクッキリと鳴らしてくれて、安心して聴ける。しかし、FMの後だとずいぶん質素に聴こえてしまう。残響音は短く、Goldmundのようなハイスピードに感じてしまったが、あくまでもFMとの対比としてなのでGoldmundファンからは共感は得られないかもしれない。
以前より感じていたBATの色彩は確かに感じられる。中高域の音に、わずかに低域方向に膨らむ響き。風呂場で湯船をかき混ぜたときの水の音のような周波数帯の音。BATに惚れる人はこの色彩に惚れるのだろう。喩えるとしても湯船ではなく、小川のせせらぎとかになるのだろうなぁ。
まことに残念ながら、私にはこの色彩が好みに合わない。ただ、この価格帯のプリアンプとしては、非常に優秀だと思うし、私的にはGoldmund Mimesis 27MEに並ぶパフォーマンスの高さだと思う。嗜好のものをパフォーマンスと言ってしまうと語弊があるが。あ、ただし外見はダメね。安っぽい。
●Viola Cadenza
いよいよ本命。ただしこの本命君、私がBATを試聴している最中にメーカーの担当さんが搬入してきたピカピカの新品。世に出てから初めて鳴らす音を私が試聴するという、何とも心もとない状況。
音を出してみた。ちょっと硬くてカスレてて、潤いと温もりが足りないが、とりあえずCadenzaの音が出て安心。この色彩の方向性なら、私の好みに合致する。このままエイジングが進めば、きっと柔らかくて艶があって、潤いと温もりのあふれるCadenzaの音になるだろう。
残響音は、FMほどではないが、BATよりも長く尾を引く。この点もCadenzaの色彩を引き立たせるのに効果を上げている。
でもFMやBATと比べるとちょっと低域が出てないなぁ、と言うと、ACケーブルが違っているとのこと。
●Stealth Cloude Nine / Shunyata Anaconda
ということで、ACケーブルを交換して再度試聴。今まで刺さっていたStealth Cloude Nineから、FMとBATで使用していたShunyata Anacondaに換えた。
曲の出だしのヴァイオリンがなんとなくSPよりちょっと前にせり出した感じがする。続くボーカルの声を聴いてあれ?と思った。別人のように声が違う。低域成分が増し厚みが出て、声に温もりが乗った。それに、奥の方に小さく定位していたのが、それまでより3歩くらい前で唄っているように感じ、急に人の気配を漂わせはじめた。全体的に硬質な感じの音は新品のせいだと思っていたのが、一気に柔らかくなった。プリごと換えたのかと思ったがそうではない、Cadenzaのままだ。それほどの変化だと思った。この状態が先ほどのFM、BATと同一環境であるなら、Cadenzaはかなり好ましい音といえる。
Stealth Cloude Nineは以前も聴いたことがあるが、多分最初の硬質な音が本来の新品Cadenzaの音であろう。Stealthは素直に何の脚色もせずにその音を出したのだと思う。それにStealthの音場型の空間表現が硬質な感じを強調してしまったのかもしれない。
Shunyata Anacondaは新品Cadenzaの硬質な音に低域の厚みを加えたようだ。空間表現は多分リアリティを増す方向に影響したのだろう。Anacondaは、この新品の試聴には大変好ましい方向に変化させたが、エイジングが進んだCadenzaにはどうだろう。さらに良くなるのだろうか、ちょっと疑問ではある。
ケーブルの選定は、時間が経ってから行うべきなのであろう。あ、もうCadenza買うつもりになってるし。
ということで、私は当初の目論見どおり、Viola Cadenzaの自宅試聴を依頼することになった。ちょうど年末年始の休みがあるので、じっくり聴くことができそうだ。
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